同じ業種で、同じくらいの規模。それなのに、銀行のほうから「お使いになりませんか」と提案が来る会社と、必要になるたびにこちらから頼みに行く会社があります。
違いは業績の良し悪しだけではありません。銀行の担当者が、社内で説明しやすい相手かどうかで決まっている部分が、かなり大きいと感じています。
融資は、担当者が決めているわけではない
融資の可否を決めているのは、目の前の担当者ではありません。担当者は資料をつくり、支店内や本部の審査へ上げる立場です。
つまり担当者にとって、説明材料が揃っている会社は仕事が進めやすい相手であり、材料が足りない会社は稟議を上げにくい相手になります。ここに差がつきます。
この構造が分かると、やるべきことははっきりします。銀行が判断できる材料を、こちらから継続的に渡しておくことです。
1. 決算期以外にも、数字を渡している
多くの会社は、決算書ができたときだけ銀行に行きます。年に一度です。その間の11か月、銀行から見た会社の状況は止まったままになります。
月次の試算表、年間の着地見込み、大きな受注や設備投資の予定。こうした情報を定期的に渡している会社は、銀行にとって状況が見えている相手です。急に資金が必要になったときも、ゼロから説明する必要がありません。
情報を出すほど不利になるのでは、と思われることがあります。ただ、悪い数字を伏せたまま話が進むほうが、後で信用を損ないます。
2. 資金使途と返済原資が、言葉になっている
「運転資金として」だけでは、銀行は判断できません。何にいくら使い、それがいつ売上になり、どこから返済するのか。この流れを説明できるかどうかで、話の進み方が変わります。
資金使途が明確な借入は、金額に根拠があります。根拠のある金額は、審査でも扱いやすい。逆に「とりあえず5,000万円」という相談は、金額の妥当性から議論が始まります。
3. 予実が、おおむね合う
これが最も効きます。
前期に提出した計画と、実際の着地がおおむね一致している会社は、次に出す計画も信用してもらえます。銀行は将来の返済能力を見ているので、将来の数字を信じられるかどうかが判断の中心にあります。
毎年、計画を大きく下回っている会社の計画は、割り引いて見られます。数字が甘いというより、計画を管理していないと受け取られるためです。
月次で予実を確認し、ずれたら理由を説明できる。この積み重ねが、そのまま金融機関からの信用になります。
取引が一行だけだと、選べない
もうひとつ、取引金融機関の数も影響します。
一行だけと取引している会社は、その銀行の方針が変わったとき、それがそのまま自社の制約になります。担当者が代わっただけで話の進み方が変わることもあります。複数行と取引していれば条件を比較できますし、一行が慎重になっても選択肢が残ります。
銀行の側から見ても、他行が取引している会社は判断がしやすい相手です。
提案が来る状態が、資金調達力
資金調達力とは、必要なときに、必要な金額を、適切な条件で調達できる会社の力です。一度融資が下りたことではなく、継続的に調達できる状態を指しています。
銀行から提案が来る状態は、その力が備わっていることの分かりやすい表れです。そして、これは業績が良くなれば自動的にそうなるものではありません。数字を見えるようにし、渡し方を設計し、取引先を組み立てた結果として、そうなります。
なお、融資の可否・金額・条件は、会社ごとの状況および金融機関の判断によって異なります。