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林 諒成長企業の社外CFO / 税理士

財務戦略

無借金経営は、本当に安全か。

著者:林 諒(税理士・社外CFO)

無借金経営は、それ自体が目的になると経営の選択肢を狭めます。借入がない会社は、使える資金が事業で稼いだ範囲に限られるため、成長機会が来たときに動けません。また、金融機関との取引実績がないため、必要になってから相談しても判断材料が決算書しかありません。一方で、資金使途のない借入を積み上げることも財務を痛めます。判断すべきは借りるか借りないかではなく、何のために、いくら、どの形で調達するかです。

  1. 01

    無借金は安全な状態ではなく、動ける金額が自己資金に限られる状態。

  2. 02

    取引実績がないと、必要になったとき銀行には判断材料が少ない。

  3. 03

    使途のない借入を積み上げると、次の融資が出にくくなる。

「借金はないほうがいい」「無借金が一番安全だ」。よく聞く考え方です。返済がなければ資金繰りは楽になりますし、金利も払わずに済みます。

ただ、成長を目指している会社にとって、無借金であること自体を目標にすると、経営の選択肢が狭くなります。

無借金は「安全」というより「小さい」

借入がない会社が使える資金は、これまで事業で稼いだ範囲に限られます。手元にある現金が、そのまま投資できる上限になります。

採用、広告、仕入、出店、設備投資。成長のための支出は、売上が立つ前に発生します。手元資金の範囲でしか動けないということは、その範囲までしか成長できないということです。

実際に、大型案件を受注できる営業力と提案力を持ちながら、先行して必要になる仕入資金を用意できず、案件を失注し続けていた会社がありました。事業に可能性がなかったのではなく、可能性を支える資金がなかっただけです。

取引実績がないと、必要になったとき間に合わない

もうひとつの問題は、金融機関との関係です。

借入をしてこなかった会社には、返済実績がありません。銀行の側から見ると、判断材料が決算書しかない相手ということになります。決算書が良ければ話は進みますが、実績のある会社と比べれば、金額も条件も慎重になりがちです。

そして、資金が必要になるのは、たいてい急いでいるときです。そのタイミングで初めて銀行を訪ねても、審査には時間がかかります。取引は、必要になる前につくっておくものだと考えています。

では、借りられるだけ借りるのが正解か

そうではありません。ここも同じくらい重要です。

資金使途のない借入を積み上げると、返済だけが先に確定します。借りた現金は使い道が決まっていないので、日々の運転資金に溶けていきます。数年後に残るのは、何に使ったか説明しにくい借入金と、その返済だけです。

さらに、返済原資に対して借入残高が大きくなりすぎると、債務償還年数が伸びます。これは金融機関が必ず見る指標のひとつで、次の融資が出にくくなる原因になります。今回の借入が、次の借入を妨げるという状態です。

借りること自体が目的になると、資金調達力はむしろ下がります。

判断すべきは、使途と金額と形

借りるか、借りないか。この二択で考えている限り、答えは出ません。

決めるべきは3つです。何のために必要か(資金使途)、いくら必要か(金額)、どの形で調達するか(借入形態と期間)。仕入のための短期資金と、設備投資のための長期資金では、必要な形が違います。運転資金であれば、都度の借入よりも枠のほうが合う場合があります。

この設計ができていれば、借入は財務を痛めるものではなく、成長を先に進めるための手段になります。逆に設計がなければ、無借金でも借入過多でも、どちらも経営の足を引っ張ります。

無借金かどうかは、結果として決まることです。先に決めるものではありません。

実務ガイド

銀行融資と資金調達の実務

ここで述べた考え方を、実際にどう進めるか。評価される、条件を良くする、設計する。8本の実務ガイドをこの順で整理しています。

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本記事は、実務経験にもとづく一般的な考え方を示すものです。個別の税務判断、および融資の可否・金額・条件については、会社ごとの状況および金融機関の判断によって異なります。実際のご判断にあたっては個別にご相談ください。

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