なぜ、資金を分けて考える必要があるのですか。
使途によって、資金が必要な期間も、返済の原資も違うためです。すべてを同じ方法で調達すると、返済期間と資金の性質が合わなくなり、返済負担だけが積み上がっていきます。
たとえば仕入資金は、仕入れて売れれば戻ってくる資金です。数か月で回収できるものを10年返済の借入で調達すれば、回収した資金は手元に残りますが、返済は10年続きます。逆に、設備投資のように長期にわたって回収する資金を短期で借りれば、回収前に返済期限が来ます。
支援の現場で頻繁に見かける落とし穴が、この短期融資と長期融資の使い分けができていないという状態です。結果として、キャッシュが貯まらない構造ができあがり、毎月の返済負担が重くなっていきます。
4つの資金とは、それぞれ何ですか。
仕入資金、経費資金、事業投資資金、プロジェクト資金の4つです。回収までの期間と、返済の原資が何かによって分かれます。
| 資金の種類 | 性質と、適した調達の考え方 |
|---|---|
| 仕入資金 | 仕入れて売れれば回収できる資金。反復して必要になるため、当座貸越などの枠で賄うのが構造に合う |
| 経費資金 | 人件費・広告費など、日常的に出ていく資金。手元の現預金と、短期の運転資金で対応する |
| 事業投資資金 | 採用・システム・出店・設備など、回収に年単位を要する資金。長期の借入で調達する |
| プロジェクト資金 | 特定の案件のために先行して必要になる資金。案件の期間と回収時期に合わせて調達する |
分類の名称は、レバレッジ資金調達戦略において用いているものです。金融機関の商品区分とは異なります。
設計は、どこから始めればよいですか。
調達できる額からではなく、必要な額から始めます。3年後に実現したい経営の姿を置き、そこから逆算して、いつ、何に、いくら必要かを積み上げます。
3年後の目標と、そこに必要な投資を書き出す
採用、出店、設備、広告、システム。金額と時期を粗くてよいので置く。
投資を4つの資金に色分けする
それぞれが、仕入・経費・事業投資・プロジェクトのどれにあたるかを振り分ける。
資金ごとに調達手段と期間を決める
枠で賄うのか、長期借入で調達するのか、自己資金で対応するのか。ここが調達ルールになる。
現在の借入と枠を並べ、不足を出す
既存の借入残高、返済スケジュール、使える枠を書き出し、計画との差額を出す。
不足を埋める調達計画に落とす
どの金融機関から、いつ、いくら、どの形で調達するか。ここでバンクフォーメーションの設計と接続する。
計画を立てても、そのとおりにいかないのではないですか。
そのとおりにいかないことを前提に立てます。計画の価値は当てることではなく、実績との差が出たときに、何が想定と違ったのかを説明できる状態を作ることにあります。
金融機関に対しても同じです。計画が未達であること自体より、未達の理由を把握しておらず、説明が毎回変わることのほうが評価に影響します。計画と実績を突き合わせる習慣があること自体が、信用の材料になります。
実務としては、毎月の予実管理と、事業計画に基づくキャッシュフロー計画がここに接続します。成長を続けている会社が当たり前にやっているのは、精緻な事業計画とそれに基づくキャッシュフロー計画を作り、毎月予実を管理し、その内容を金融機関に定期的に共有するという一連の流れです。
資金使途を細かく分けると、かえって借りにくくなりませんか。
逆です。資金使途が具体的であるほど、金融機関は判断しやすくなります。融資審査で最初に確認されるのが、何に、いつ、いくら必要かという点だからです。
「運転資金として」とだけ伝えるより、「繁忙期の仕入が◯月に◯円分先行するため、その立替として」と説明できるほうが、担当者は稟議書を書きやすくなります。設計図があるということは、この説明の材料が常に手元にあるということです。
当方の一次データ
設計図があると、大型案件を取りに行ける。
おカネの設計図の効果が最も分かりやすく出るのは、大型案件のチャンスが来たときです。資金の裏付けがある会社は受注でき、ない会社は失注します。この差は営業力ではなく、設計の有無によるものです。
マーケティング業の会社は、創業2期目に大手企業との契約のチャンスを得ました。しかしその案件は、多額の広告媒体枠の仕入資金がなければ受注できないものでした。金融機関や知人に資金調達を相談して奔走しましたが失敗し、案件は失注。人材採用にもブレーキがかかり、共同創業したCOOも退職し、成長スピードが失速しかけていました。
そこで行ったのは、目先の節税や単発の資金調達ではなく、中期的な目線で社長が自由に使えるキャッシュを増やし続ける仕組みを作ることでした。実質返済不要の融資枠を設定し、仕入資金の不安をなくすことで、いつでも大型案件を提案・受注できる状態を作りました。そして調達した資金をどこに、いくら、どのように使うかを、経営陣で常に議論しながら事業投資を進めました。
創業2期目にもかかわらず1年間で5,000万円の新規融資を獲得し、それによって億単位の大型案件の受注に成功。年商は3.6億円まで急成長し、従業員数も4名から9名に増えました。その後、社長がいつでも自由に調達・使用できる実質返済不要の融資枠を計4億円まで作り、大手企業との案件を続々と受注、創業3年で年商22億円に到達しています。
設計図がなかった時期に失注した案件と、設計図ができてから受注した案件で、営業の力量が変わったわけではありません。変わったのは、資金の裏付けを持って提案できるかどうかです。
2019年(独立)以降、レバレッジ資金調達戦略を設計・実装した36業種50社以上(2026年8月時点)における実務にもとづいて記載しています。個社の数値は当該企業の実績であり、業種と規模のみを開示しています。成果は各社固有の状況によるものであり、同様の成果を保証するものではありません。