本文へスキップ
林 諒成長企業の社外CFO / 税理士

資金調達

「今借りられる」は、「未来も借りられる」を意味しない。

著者:林 諒(税理士・社外CFO)

現時点で融資を受けられていることと、資金調達力があることは同じではありません。会社が成長すれば必要となる金額は大きくなり、求められる財務水準も上がります。また、財務体質の改善は決算期をまたぐため、必要になってから着手したのでは間に合いません。業績が良く、銀行からの評価が高いときほど、設計の選択肢は多く残っています。

  1. 01

    必要な金額が大きくなれば、求められる財務水準も上がる。

  2. 02

    財務体質の改善は決算期をまたぐため、短期間では動かせない。

  3. 03

    成長機会は突然来る。そのとき準備がなければ機会を逃す。

「うちは今のところ、資金繰りに困っていないので」というお返事をいただくことがあります。実際、決算も黒字で、既存の取引銀行からも必要な額は出ている。困っていないのは事実です。

それでも、今のうちに財務戦略に着手する意味があると考えています。理由は3つあります。

1. 必要な金額が変われば、求められる水準も変わる

年商3億円の会社が3,000万円を借りるのと、年商10億円の会社が2億円を借りるのとでは、金融機関の見方が変わります。金額が大きくなるほど、返済原資となる利益、純資産の厚み、債務償還年数といった指標が厳しく見られます。

今の規模で問題なく借りられていることは、次の規模でも同じように借りられることを意味しません。会社が成長すると、必要額と一緒に、求められる財務水準も上がっていきます。

2. 財務体質は、短期間では動かせない

利益の蓄積、純資産の厚み、銀行との取引実績。いずれも、数か月でつくれるものではありません。決算期をまたいで、はじめて数字として動きます。

たとえば自己資本を厚くしようとすれば、利益を残す必要があり、それは決算を経なければ純資産に反映されません。プロパー融資の実績も、一度の取引では積み上がりません。

つまり、必要になってから着手したのでは間に合わない性質のものです。

3. 業績が良いときほど、選択肢が多い

これが最も大きい理由かもしれません。業績が良く、決算内容が良いときは、金融機関の側から見ても取引を増やしたい相手です。新規の取引を始めるのも、条件を交渉するのも、このタイミングが最もやりやすい。

逆に、業績が落ちてから新しい銀行に行くのは簡単ではありません。説明すべきことが増え、判断にも時間がかかります。

余裕があるうちに準備しておくと、いざというときに選べる手が残ります。

成長機会は、こちらの都合を待ってくれない

大型案件の打診、好条件の物件、採用したい人材、M&Aの話。こうした機会は、準備が整うのを待ってはくれません。

そのときに資金を用意できなければ、機会そのものが他社に渡ります。実際に、事業力はあるのに先行資金が用意できず、大型案件を失注していた会社を見てきました。

資金調達力とは、必要なときに、必要な金額を、適切な条件で調達できる会社の力です。一度借りられる能力ではなく、継続的に調達できる状態のことを指しています。

実務ガイド

銀行融資と資金調達の実務

ここで述べた考え方を、実際にどう進めるか。評価される、条件を良くする、設計する。8本の実務ガイドをこの順で整理しています。

詳しく見る →

本記事は、実務経験にもとづく一般的な考え方を示すものです。個別の税務判断、および融資の可否・金額・条件については、会社ごとの状況および金融機関の判断によって異なります。実際のご判断にあたっては個別にご相談ください。

財務体制について相談するYouTubeで学ぶ