「うちは今のところ、資金繰りに困っていないので」というお返事をいただくことがあります。実際、決算も黒字で、既存の取引銀行からも必要な額は出ている。困っていないのは事実です。
それでも、今のうちに財務戦略に着手する意味があると考えています。理由は3つあります。
1. 必要な金額が変われば、求められる水準も変わる
年商3億円の会社が3,000万円を借りるのと、年商10億円の会社が2億円を借りるのとでは、金融機関の見方が変わります。金額が大きくなるほど、返済原資となる利益、純資産の厚み、債務償還年数といった指標が厳しく見られます。
今の規模で問題なく借りられていることは、次の規模でも同じように借りられることを意味しません。会社が成長すると、必要額と一緒に、求められる財務水準も上がっていきます。
2. 財務体質は、短期間では動かせない
利益の蓄積、純資産の厚み、銀行との取引実績。いずれも、数か月でつくれるものではありません。決算期をまたいで、はじめて数字として動きます。
たとえば自己資本を厚くしようとすれば、利益を残す必要があり、それは決算を経なければ純資産に反映されません。プロパー融資の実績も、一度の取引では積み上がりません。
つまり、必要になってから着手したのでは間に合わない性質のものです。
3. 業績が良いときほど、選択肢が多い
これが最も大きい理由かもしれません。業績が良く、決算内容が良いときは、金融機関の側から見ても取引を増やしたい相手です。新規の取引を始めるのも、条件を交渉するのも、このタイミングが最もやりやすい。
逆に、業績が落ちてから新しい銀行に行くのは簡単ではありません。説明すべきことが増え、判断にも時間がかかります。
余裕があるうちに準備しておくと、いざというときに選べる手が残ります。
成長機会は、こちらの都合を待ってくれない
大型案件の打診、好条件の物件、採用したい人材、M&Aの話。こうした機会は、準備が整うのを待ってはくれません。
そのときに資金を用意できなければ、機会そのものが他社に渡ります。実際に、事業力はあるのに先行資金が用意できず、大型案件を失注していた会社を見てきました。
資金調達力とは、必要なときに、必要な金額を、適切な条件で調達できる会社の力です。一度借りられる能力ではなく、継続的に調達できる状態のことを指しています。