「決算書をデザインする」という言い方をしています。この表現は、ときどき誤解されます。数字を実態より良く見せるという意味に取られることがあるためです。
まず、はっきりさせておきます。粉飾や、実態と異なる表示を行うことは一切ありません。「デザインする」とは、実態として財務体質を強くするという意味です。
決算書は、結果であると同時に、材料でもある
決算書は、1年間の活動が終わったあとに出てくる結果です。それは間違いありません。
ただし、資金調達の観点から見ると、もうひとつの側面があります。決算書は、次の1年で調達できる金額を決める材料でもあるということです。
金融機関は、決算書から返済能力を判断します。したがって、決算書の内容が、翌期の資金調達の上限を実質的に決めています。この意味で、決算書は過去の記録であると同時に、未来の資金調達力を決める設計対象でもあります。
設計するときに見る6項目
具体的には、次の項目を見ます。利益(返済原資を生んでいるか)、純資産(会社に厚みがあるか)、自己資本比率(資産に対する自己資本の割合)、債務償還年数(今の利益で有利子負債を返すのに何年かかるか)、現預金(月商の何か月分あるか)、借入構造(何を、どの形態で借りているか)。
重要なのは、どれか1つを良くすれば済むものではないという点です。たとえば利益を出せば納税が発生し、手元資金は減ります。借入を減らせば債務償還年数は改善しますが、手元の現預金も減ります。項目同士が影響し合っています。
だから、次の成長ステージで必要となる資金額から逆算して、全体のバランスを決めます。
節税との関係を、どう考えるか
一般論として、利益を圧縮すれば純資産の蓄積は遅くなり、財務指標にも影響します。一方で、税負担を軽くすること自体には合理性があります。
重要なのは、どちらか一方を選ぶことではありません。3年後に必要となる資金と、そのために必要な財務水準を先に把握したうえで判断することです。判断材料がないまま「とりあえず税金を減らす」となると、数年後に調達できる金額が想定より小さくなっていることがあります。
なお、個別の税務判断は会社ごとの状況によって結論が異なります。実際のご判断にあたっては、必ず個別にご相談ください。
決算が締まってからでは遅い
決算書を設計するというのは、期中の話です。決算が締まってから「今期はこうなりました」と確認するのでは、できることがほとんど残っていません。
年間着地の見込みを期中から把握し、必要であれば手を打つ。そのために、月次決算を早く正確に出せる状態が前提になります。
決算書は、経営のスピードを加速するためのエンジンであり、武器です。結果を受け取るだけの書類にしておくのは、もったいないと考えています。