プロパー融資と保証協会付き融資は、何が違いますか。
返済できなくなったときに損失を負うのが誰かが違います。保証協会付き融資では信用保証協会が代位弁済するため金融機関のリスクは限定され、プロパー融資では金融機関が全額のリスクを負います。
| 保証協会付き融資 | プロパー融資 |
|---|---|
| 信用保証協会が保証する | 金融機関が自らリスクを負う |
| 審査が通りやすい | 審査が厳しい |
| 保証料が別途かかる | 保証料はかからない |
| 保証限度額という上限がある | 金額の上限は金融機関の判断による |
| 初回の取引で使いやすい | 取引実績が前提になりやすい |
出典:全国信用保証協会連合会
なぜ、プロパー融資を目指す必要があるのですか。
信用保証協会の保証には限度額があり、有限の資源だからです。保証枠を使い切った状態でプロパー融資の実績がないと、次に資金が必要になったときに調達手段が残っていないことになります。
成長している会社ほど、この問題は早く訪れます。売上が伸びれば必要な運転資金も増え、設備投資も重なるためです。保証枠は数年で使い切ることがあり、その時点から関係を作り始めても、金融機関側にはプロパーで出す判断材料がありません。
実務でよく見かけるのは、保証協会枠の使い方が悪く、プロパー融資が借りられていないために、借りられる額がすぐに上限に達してしまうという状態です。単発の資金調達を繰り返しているうちに枠を消費し、いざ大きな投資機会が来たときに動けなくなります。
したがって、保証枠にまだ余裕がある時期に、あえてプロパー融資を少額でも実行してもらい、実績を作っておくという考え方になります。これは目先の調達のためではなく、将来の調達余力を確保するための行動です。
どうすれば、プロパー融資に移行できますか。
金額の大きな案件でいきなり申し込むのではなく、少額のプロパー融資を先に実行してもらい、返済実績を重ねてから金額を上げていきます。金融機関の内部では、プロパーの実績が有るか無いかが大きな分かれ目になるためです。
月次試算表を毎月提出する
決算書だけを年1回渡している状態では、金融機関は期中の状況を把握できない。まず情報開示の頻度を上げる。
資金使途と返済原資を数字で説明できるようにする
何にいくら使い、何から返すのかを明示する。担当者が稟議書に書ける形の材料を渡すという発想が重要になる。
少額のプロパー融資を提起する
運転資金の一部など、金額を絞って提起する。金額より、プロパーとして実行された実績を作ることが目的。
返済実績を積む
約定どおりの返済を重ねる。この期間が、次の判断の材料になる。
金額と本数を段階的に増やす
実績ができたうえで、必要額に近づけていく。並行して、当座貸越などの枠取引も検討できるようになる。
銀行員が稟議を通しやすい材料とは、何ですか。
融資判断を行うのは目の前の担当者ではなく、支店内あるいは本部の決裁ラインです。担当者が説明を書きやすい材料を渡せているかどうかが、実務上は結果を大きく左右します。
- 資金使途が具体的であること(何に、いつ、いくら)
- 返済原資が数字で示されていること
- 月次の数字が継続的に開示されていること
- 前回の説明と今回の説明に一貫性があること
- 計画と実績の差異について、理由が説明できること
計画が未達であること自体が問題視されるとは限りません。未達の理由を把握しておらず、説明が変わることのほうが評価に影響します。
金利が低いほうを選べばよいのではないですか。
金利だけで選ぶと、調達手段の選択肢を減らすことがあります。保証協会付き融資は金利が低く見えても保証料が加わり、さらに有限の保証枠を消費するためです。
同じ金額を借りるとき、保証枠を使って借りるのか、プロパーで借りるのかは、目先のコストだけでは判断できません。プロパーの実績を作る機会として見れば、多少の金利差を負担する意味があります。
逆に、保証協会付き融資を使うべき局面もあります。長期の設備資金で、金融機関単独ではリスクを取りにくい案件などです。使い分けの設計そのものが、資金調達力の中身になります。
当方の一次データ
赤字でも、債務超過でも、プロパーが出た例がある。
プロパー融資は財務内容が良い会社だけのものではありません。支援先には、3期連続の赤字で債務超過に陥った状態から、債務超過を解消する前にプロパー融資を獲得した会社があります。分けたのは数字ではなく、説明と計画の作り方でした。
展示会施工業のその会社は、下請け案件を伸ばして年商5億円まで到達していましたが、人の入れ替わりが激しく採用費がかさみ、利益が薄い状態でした。そこにコロナ禍で売上が大幅に減少し、3期連続の赤字、債務超過に転落しました。
打ち手は4つです。持ちこたえられるよう可能な限りの融資を受けてキャッシュポジションを厚くすること。資本性ローンの導入によって金融取引を早期に正常化へ向かわせること。補助金を活用して別軸の売上を作る新規事業に着手すること。そして、採用の手を止めずに組織力を強化することです。
結果として、債務超過を解消する前にもかかわらず8,000万円の新規融資を獲得し、うち5,000万円はプロパーでした。さらに資本性ローンを5,000万円、追加のプロパー融資を3,000万円獲得しています。最終的に年商はコロナ前の2.5倍、営業利益率も3.5%以上まで回復しました。
宿泊施設運営業の会社では、一時的に売上が減少しても資金繰りに困らないよう先にプロパー融資を8,000万円調達し、経営改善に集中できる環境を作りました。その後1年間で1.9億円の新規プロパー融資を、経営者保証なしで獲得しています。
スタートアップでも同様です。サーキュラービジネスの会社では、エクイティでの調達を見据えて、事前に複数の地方銀行と継続的なコミュニケーションを行いました。その結果、3行から1億円のプロパー融資を含む1.4億円のデットファイナンスを実現し、エクイティと合わせて5億円の資金調達を達成しています。ここで効いたのは、必要になってから相談したのではなく、必要になる前から関係と情報開示を積み上げていたことです。
| 局面 | プロパー獲得の起点になったこと |
|---|---|
| 3期連続赤字・債務超過 | 資本性ローンによる金融取引の正常化と、新規事業の計画提示 |
| 業績悪化の途上 | 悪化する前に先に調達し、改善に集中できる環境を作った |
| 赤字ではないが調達が止まった | 借り方そのものを、条件の良い形へ転換した |
| エクイティ調達の前 | 必要になる前から、複数行と継続的に情報開示していた |
2019年(独立)以降、レバレッジ資金調達戦略を設計・実装した36業種50社以上(2026年8月時点)における実務にもとづいて記載しています。個社の数値は当該企業の実績であり、業種と規模のみを開示しています。成果は各社固有の状況によるものであり、同様の成果を保証するものではありません。