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林 諒成長企業の社外CFO / 税理士

Guide

顧問税理士を見直す

執筆:林 諒(成長企業の社外CFO / 税理士 税理士登録番号 140050)

累計デットファイナンス支援40億円超(2019年(独立)以降、林 諒が支援した企業が金融機関から調達した融資・当座貸越枠等の累計額です。)

顧問税理士への不満の多くは、相手の能力ではなく、会社の側で必要な機能が変わったことから生じます。年商が3億円を超えると、契約・発注・請求の情報が各担当者に分散し、会計の入口で資料が集まらなくなります。その結果、計上が遅れ、内容の確定しない残高が積み上がり、決算書は過去を集計しただけのものになります。問題は融資や投資判断が必要になった瞬間に表面化するため、不満も損失も大きくなります。目的が税務申告の品質と経営管理体制の整備であれば変更が必要で、将来の設計を埋めることであれば機能の追加で対応できます。ただし後者の場合も、顧問税理士が数字の土台を作れることが前提になります。

  1. 01

    起点は「情報が集まらないこと」。計上の遅れも不明残高も、その結果として生じる。

  2. 02

    問題は融資や投資判断の直前に表面化する。平時には誰も困らないため、気づくのが遅れる。

  3. 03

    顧問税理士=土台づくり、社外CFO=戦略と実行。両輪で、土台を担えないなら変更が要る。

会社が伸びてから、数字まわりが噛み合わなくなりました。何が起きているのですか。

情報が社内に分散し、会計の入口で資料が集まらなくなっています。取引の量が増え、各担当者がそれぞれ契約し発注するようになると、会社の支出の全体像を誰も把握していない状態が生まれます。

年商3億円の頃は、契約も請求も支払いも、社長がほぼすべて把握できていたはずです。誰と何を約束し、いつ、いくら払うのか。頭の中に入っていました。

それが年商5億円、10億円と進むにつれて、現場が自分で判断して動くようになります。これは組織として正しい変化です。しかし同時に、契約書は担当者の手元に、請求書は個人のメールボックスに、発注の経緯はチャットに、という形で情報が散らばっていきます。

ここで見落とされがちなのが、経理の側からは手の打ちようがない、という点です。どんな契約が、どの相手先と、どういう経緯で結ばれ、誰が担当しているのか。これを経理が自力で把握することは、ほぼ不可能です。現場が持っている情報を現場から出してもらう以外に方法がありません。結果として、情報が散らばった状態はますます進んでいきます。

さらに、この規模の会社の多くは、簿記や会計の知識と実務経験を持つ経理の専任担当者を社内に置けていません。採用しようにも、この層の人材はそもそも多くなく、簡単には見つかりません。そのため顧問税理士や経理代行へのアウトソースに頼ることになりますが、社外に出せば出すほど、社内に情報を集める力は育ちません。管理部門は資料の催促に追われて疲弊し、それがそのまま経営管理体制の弱さとして残っていきます。

やがて、月末の支払一覧を見て「この相手への支払いは何だったか」が即答できなくなります。ここが分岐点です。社長が全体を把握できなくなった時点で、経理も同じものを把握できていません。資料をもれなく、早く集めようとしても、集めるべき情報がそもそも一箇所に集まっていないためです。

  • 支払一覧の中に、何の取引か即答できないものがある
  • 契約書がどこにあるか、担当者に聞かないと分からない
  • 請求書の到着が遅れ、月次の締めが毎月ずれ込む
  • 同じ取引先に、複数の部署が別々に発注している
  • 値引きや条件の変更が口頭で決まり、記録に残っていない
  • 経理から現場への資料の催促が、毎月同じ相手に繰り返されている

これは管理が甘いという話ではありません。取引の量が、それまでの管理のやり方の限界を超えたという、規模の問題です。年商3億円を超えたあたりから、多くの会社が同じ順序で通過します。

資料が集まらないと、会計には何が起きますか。

計上が遅れ、内容の確定しない取引が残高として積み上がります。仮払金、仮受金、現金、未収入金といった勘定に、説明のつかない金額が溜まっていきます。

経理は、資料が来ないものを放置できません。期日までに何らかの形で処理する必要があるため、確定できないものはいったん仮の勘定に置くことになります。本来はそのあと資料が揃って振り替えられるべきものですが、現場が忙しければ、そのまま残ります。

これが1年、2年と積み重なると、貸借対照表に「中身を誰も説明できない残高」が居座ることになります。会計と税務の精度は、こうして静かに下がっていきます。

積み上がるもの放置した場合に生じること
内容不明の仮払金・仮受金税務上の取扱いを確定できず、説明を求められた際の材料がない
実在と合わない現金残高帳簿そのものの信頼性が問われる
計上時期のずれた売上・仕入期間損益がゆがみ、業績の良し悪しを読み誤る
本来は資産計上すべき支出の費用処理損金に算入する時期の誤りにつながる
回収の見込みがないまま残る売掛金資産が過大に見え、実態より良い決算書になる

ひとつひとつは小さな論点です。問題は、積み上がったあとで遡って整理しようとすると、当時の資料や経緯がすでに失われていることが多い点にあります。

決算書が「過去の集計」になると、具体的に何が困るのですか。

将来の意思決定に使えなくなります。そして、その影響は融資や投資の判断が必要になった瞬間に、まとめて表面化します。

精度の落ちた決算書は、過去の取引を集計しただけのものになります。それでも申告はできます。だから、平時には誰も困りません。これが発見を遅らせます。

困るのは、お金が必要になったときです。銀行に融資を申し込む段になって、決算書の中身を説明できないことに気づく。あるいは新規出店や設備投資の可否を判断しようとして、その土台になる数字が作られていないことに気づく。

さらに踏み込むと、財務分析をしようにも前提が整っていない、という状態があります。部門別の損益が分からない、商品別の粗利が出せない、どの拠点が利益を生んでいるか説明できない。この状態では、何を改善すべきかという議論そのものが始まりません。

顧問税理士への不満が一気に膨らむのは、たいていこの瞬間です。平時には見えていなかった問題が、最も困る場面で一度に表に出るためです。そして会社が受ける打撃も、このタイミングだからこそ大きくなります。

実際に見てきたなかでは、金額として表に出た例もあります。取引が複雑になり量も増えたあとで、リスク管理やガバナンスが働く体制のないまま進んだ結果、会計や税務上の取扱いが正しくなかったことが後から判明し、多額の追加納税が生じたケース。M&Aで会社を売却する局面で、経営管理体制が弱かったために生じていた問題点を買収監査で指摘され、売却価額を押し下げる要因になったケース。いずれも、原因が生まれていたのは数年前であり、その時点では誰も困っていませんでした。

表面化する場面そのときに起きること
融資を申し込むとき銀行の評価が低い決算書になっており、希望した金額が通らない
銀行から説明を求められたとき内容不明の残高について、答える材料がない
出店・設備投資を判断するとき回収可能性を試算する土台の数字がない
不採算の事業を見直すときどの事業が赤字なのかを特定できない
税務調査や決算の見直しで指摘を受けたとき過去の取扱いの誤りが判明し、多額の追加納税につながることがある
M&Aで会社を売却するとき経営管理体制の弱さから生じていた問題点を買収監査で指摘され、売却価額を押し下げる要因になる

これらは決算を締めたあとでは取り返せません。銀行が見るのは確定した決算書であり、作り直すことはできないためです。手を打てるのは期中だけです。なお本節で触れた事例は、林 諒が実務で関与・見聞した範囲のものであり、同様のことが必ず起きるという意味ではありません。

なぜ、ここまで来ると今の顧問税理士では難しくなるのですか。

能力の差ではなく、経験してきた規模帯の違いによることがほとんどです。年商3億円未満の会社で起きることと、年商10億円の会社で起きることは、質が違います。

年商3億円の会社で数字が1%ずれたとき、金額にすれば300万円です。実務上の影響は限定的で、問題として表面化しないことが多くなります。ビジネスモデルも比較的単純で、金額の大きい取引は限られています。

同じ1%のずれが、年商10億円の会社では1,000万円になります。この水準になると、社長の現場感覚と帳簿の数字との乖離が、経営判断そのものを誤らせます。だからこそ、タイムリーに数字を見てPDCAを回す体制が要るようになります。

加えて、規模が大きくなると取引の形そのものが増えます。継続的な役務提供、前受・前払の発生、複数年にまたがる契約、進行中の工事や受託案件、グループ会社間の取引、持分や資本の移動。それぞれに処理方法の検討が必要で、そもそも論点があることに気づけるかどうかで結果が変わります。

そして、こうした規模の会社を数多く担当してきた事務所は、数のうえでは多数派ではありません。令和3年経済センサス‐活動調査によると、売上高1億円未満の企業が全体の79.7%を占めています。1企業当たりの売上高は平均4919万円です。売上高3億円以上の企業となると、全体の10%程度しかいないとも言われています。担当する会社の分布がそうである以上、年商10億円規模で生じる論点を実務で繰り返し扱ってきた事務所のほうが、少数になります。

年商数字が1%ずれたときの金額
3億円300万円
5億円500万円
10億円1,000万円
30億円3,000万円

同じ精度で仕事をしていても、規模が変われば結果の重さが変わるということです。相手の仕事の質が落ちたわけではありません。

出典:令和3年経済センサス‐活動調査 産業横断的集計 結果の概要(総務省・経済産業省・PDF)(売上高階級別の企業等数。売上高1億円未満の企業が全体の79.7%を占める)

規模が大きくなると、新しく何が必要になりますか。

数字を集計する仕組みから、分析して意思決定に使う仕組みへの作り替えが必要になります。年商3億円を超えたあたりで検討が始まり、年商10億円では前提になります。

複数の店舗や拠点を持つ。複数の事業を営む。主力の商品やサービスが分かれる。営業やマーケティングの手法が複線化する。成長するとは、要するに会社の中が複雑になるということです。

全社の合計だけを見ていては、どこで稼いでどこで失っているかが分かりません。部門別・拠点別・商品別に損益を分けて見る体制が、ここで初めて必要になります。これは税務申告のために必要なものではないため、申告だけを委託している関係からは出てきません。

年商のレンジ求められる水準
3億円未満正確な記帳と申告。全社の損益が見えていれば足りることが多い
3億円〜10億円月次の早期化と、部門別・拠点別の損益把握の検討が始まる
10億円〜30億円部門別会計と経営管理体制が前提になる。資金調達の設計も並行して要る
30億円〜資本政策、組織再編、グループ経営を含む判断が加わる
  1. 月次を翌月中に締められる状態にする

    情報が集まる経路を先に作る。はじめは精度より速度を優先し、回し始めることを重視する。

  2. 部門・拠点・商品の区分を決める

    あとから変えると過去と比較できなくなる。区分の設計を先に行う。

  3. 共通費の配賦ルールを決める

    厳密さより、毎月同じ基準で続けられることを優先する。

  4. 分析の型を固定する

    毎月同じ切り口で見る。見方が変わると、変化そのものを読み取れない。

  5. 数字を使って意思決定する会議を置く

    見るだけでは何も変わらない。何を決める場なのかまでを設計する。

さらに先では、どんな論点が出てきますか。

会社の形そのものに関わる判断が増えます。ここは税務の正確さだけでは扱えない領域で、判断を誤ると選択肢そのものが狭まります。

これらは、どれも一度の判断が長く効きます。やり直しが難しく、順序を誤ると取れる選択肢が減ります。たとえば株主構成は、整える前に資本を入れてしまうと、あとから戻すのに時間も費用もかかります。

会社の判断のレベルが上がったのであれば、相談する相手のレベルも引き上げておく必要があります。そこが追いついていないこと自体が、経営上のリスクになり得ます。

  • 複数の金融機関との取引構成をどう設計するか
  • 成長投資の資金を、どの手段で、いつ調達するか
  • 株主構成と資本政策をどう整えるか
  • M&Aによる事業の取得や売却をどう判断するか
  • 組織再編やホールディングス化が自社に必要か
  • 事業承継を見据えて、いつから何を準備するか

では、顧問税理士を変えるべきなのでしょうか。

目的が「税務申告の品質」と「経営管理体制の整備・強化」であれば、変更が必要になります。目的が「将来の設計の不足」を埋めることであれば、変えずに機能を足して対応できます。

この切り分けをしないまま探し始めると、税務の品質には問題がなかったのに顧問を替え、会社の経理実務が一度止まるだけ、ということが起こります。会社の数字を一番よく知っている相手を入れ替えるコストは、見えにくいだけで小さくありません。

ただし、機能を足して対応する場合にも条件がひとつあります。顧問税理士の側を、自社の成長ステージに合った経営管理・財務体制の整備ができる水準へ引き上げておく必要がある、ということです。そこが対応できないままだと、数字の土台を作る機能が働かず、月次も決算も取引を集計しただけのもので止まります。その上にどんな戦略を載せても動きません。

そしてもうひとつ。相談したい内容が銀行融資や事業計画、資金繰りの設計にまで及ぶのであれば、変更を選んだほうが結果は出やすくなります。決算書をデザインするという思考と、それを実際の処理に落とす対応力を持った税理士でなければ、戦略を描くところまではできても、土台となる数字が作られないためです。絵に描いた餅で終わります。

結局のところ、顧問税理士が担うのは土台づくりであり、財務アドバイザーや社外CFOが担うのは戦略の策定と実行支援です。この2つは自転車の両輪で、どちらか一方だけでは前に進みません。相互の連携が前提になります。前者を今の顧問税理士で担えないのであれば、変える必要が出てくる、というのが実際のところです。

感じている不満まず検討すべきこと
自社の取引で生じる論点が、検討されている様子がない変更の検討
質問への回答が返ってこない、連絡がつかない変更の検討
担当者が頻繁に変わり、会社の実態を知る人がいない変更の検討
経営管理体制を整えたいが、その話ができない変更の検討。土台を作る役割そのものが担えていない
銀行融資の相談をしても答えが返ってこない変更の検討。決算書の設計まで踏み込める相手が要る
事業計画や資金繰りの設計に踏み込んでくれない変更の検討。戦略だけ作っても土台の数字が伴わない
部門別の損益を出したいが、対応してもらえない変更の検討、または経理体制の見直し
節税の話しか出てこない財務機能の追加
将来の資金計画や投資判断の相談相手がいない財務機能の追加
月次が2〜3か月遅れ、経営判断に使えないまず改善を求める。変わらなければ変更
内容不明の残高が積み上がっているまず原因を特定する。会計側ではなく、情報が集まる経路の問題であることが多い

表は目安です。同じ事象でも、会社の規模や成長段階によって妥当な判断は変わります。

変更しなくても解決できるのは、どういう場合ですか。

申告と記帳の品質に問題がなく、かつ今の顧問税理士が土台づくりを担える場合です。この2つが揃っていれば、税務顧問はそのままに、財務の機能だけを別に確保できます。

ここでいう土台づくりとは、月次を早期に締めること、部門別・拠点別に損益を分けること、決算書をどう作るかの設計に期中から関与すること、の3つを指します。これができていれば、戦略を担う相手を外から足すことで会社は動きます。

逆に、この3つのどれかが欠けたまま財務の機能だけを足すと、戦略を描く側は土台のない数字の上で仕事をすることになります。計画は立つが、実行する段階で数字が追いつかない。この形は長く続きません。

したがって、機能を足す道を選ぶ場合でも、顧問税理士の側に土台づくりを担えるところまで上がってもらうことが前提になります。それを依頼しても動かないのであれば、変更が選択肢に戻ってきます。

選択肢は、おおよそ次の4つに整理できます。

選択肢適する状況
現状を維持する申告は正確で、月次も使える状態。当面は大きな投資も資金調達も予定していない。
財務顧問を追加する土台づくりは今の税理士で担える。将来の資金計画や投資判断の相手だけを足したい。
社外CFOを追加する同じく土台は担えている。そのうえで財務の意思決定や経営会議にまで入ってほしい。
税務顧問を変更する申告や記帳の品質に不安がある。経営管理体制を整えたい。銀行融資や事業計画の設計まで一体で見てほしい。

顧問税理士が土台を担い、財務アドバイザーや社外CFOが戦略と実行を担う。この2つは自転車の両輪です。片方だけを強くしても前には進みません。

変更したほうがよいのは、どういう場合ですか。

税務や会計の実務そのものに不安が残る場合です。ここは財務の機能を足しても解消しません。土台が揺れている状態で、その上に設計を積むことはできないためです。

ただし、ひとつの事象だけで判断するのは早計です。担当者レベルの問題であれば、担当の変更を申し入れることで解決することもあります。事務所の代表に一度直接伝えてみる、という段階を挟む価値はあります。

  • 自社の規模や取引で当然に生じる論点について、検討した形跡が見えない
  • 処理の根拠を尋ねても、説明が返ってこない
  • こちらから連絡しても、数日以上返答がない状態が常態化している
  • 内容不明の残高を指摘しても、整理に向けた提案が出てこない
  • 税務調査の際に、会社側の説明を支えてもらえなかった
  • 会社の実態を知らないまま、形式的な処理だけが続いている

変更するなら、いつが適切ですか。

避けるべきなのは決算直前だけです。それ以外であれば、決めたあとに引き延ばす理由はありません。合っていない状態を続けるほど、内容の確定しない残高も、設計されないままの決算も積み上がっていきます。

「決算日の直後がきれいだから、それまで待つ」という考え方はあります。1事業年度を1つの事務所が通して担当できるため、責任の所在は確かに明確になります。引き継ぎの手間も最も小さくなります。

ただし、決算期まで半年以上あるのなら、その半年は何も改善されないまま過ぎます。月次は遅れ続け、内容不明の残高は増え続け、決算書の設計には誰も入らない。きれいに引き継ぐために失うもののほうが、大きくなることがあります。

決算直前でない限り、気づいた時点で変更に向けた計画を立て始めるほうが、得られるものは大きいと考えています。すぐに契約を切り替える必要はありません。候補を探し、実際に話を聞き、引き継ぎの段取りを決める。ここまで進めておけば、切り替える時期はあとから選べます。動き出しを遅らせる理由がないだけです。

もうひとつ、時期を早めることには積極的な意味があります。決算までの残り時間が長いほど、意味のある数字づくりと改善施策に使える時間が増えるということです。決算書は締めてしまえば動かせません。期中にどれだけ関与してもらえるかで、その期の決算書の質が決まります。半年あれば打てる手は多く、1か月では整理が精一杯です。早く動くほど、最初の決算から違いが出ます。

時期考え方
決算日の直後引き継ぎは最もきれいになる。ただし、ここまで待つこと自体が目的にはならない。
期中(決算まで期間がある)待つ理由は乏しい。計画を始め、整った時点で切り替える。
申告が終わった直後現実的な選択。期首からの数か月分は前任の処理を引き継ぐことになる。
決算直前避ける。新しい顧問が会社の実態を把握しないまま決算を組むことになる。
  1. 候補を2〜3社に絞り、実際に担当する人に会う

    契約してからでは選び直せない。ここに時間をかける価値がある。

  2. 現在の顧問契約書で、解約の条件を確認する

    通知の方法や時期が定められていることがある。先に読んでおく。

  3. 引き継ぐ資料とデータの範囲を決める

    特に内容不明の残高がある場合、その内訳の資料を必ず含める。

  4. 切り替える時期を決め、現在の顧問に伝える

    ここまで整えてから伝えると、引き継ぎが滞りにくい。

融資の申込を予定している時期と重ねるのは避けたほうが安全です。金融機関から見ると、決算書の作成者が変わる時期は説明を求められやすくなります。

費用は上がりますか。

担ってもらう範囲が変われば変わります。比較するときは月額だけでなく、年間の総額と、その金額に何が含まれるかを並べてください。

月額顧問料が同じでも、決算料・申告料・年末調整・償却資産申告・各種届出が別請求になっているかどうかで、年間総額は大きく変わります。訪問の頻度、月次の提供時期、税務調査の立会いが含まれるかも確認が必要です。

成長段階にある会社では、安さを基準に選ぶと数年で合わなくなります。年商が3億円から10億円に向かう局面で必要になるのは記帳の代行ではなく、銀行にどう説明するかまで含めた数字の設計だからです。

確認する項目見るべき点
年間総額月額×12だけでなく、決算料・申告料を含めた合計
別請求の範囲年末調整、償却資産申告、各種届出、修正申告
月次の提供時期翌月何日までに試算表が出るか
面談の頻度と形式訪問かオンラインか。誰が来るか
税務調査の立会い顧問料に含まれるか、別途か
財務・融資の相談対応範囲はどこまでか。具体的に何をしてくれるのか
管理会計への対応部門別・拠点別の損益を出せるか。設計から入ってくれるか

失敗しないために、何を確認すればよいですか。

資格の有無ではなく、自社と同じ規模帯・同じ局面での実績があるかを確認してください。税理士登録の有無は公式サイトで照合できます。

  • 税理士登録の有無を、日本税理士会連合会のサイトで確認する
  • 自社と同じ年商レンジの関与先が、実際に何社あるか
  • 自社と同じ業態で、どんな論点を扱った経験があるか
  • 銀行融資について具体的に何をするのか(講評までか、面談に同席するか、設計に入るか)
  • 部門別の損益や管理会計の設計に対応できるか
  • 月次をいつまでに出すかを、契約前に数字で確認する
  • 実際に担当する人に会う。代表者とだけ話して決めない
  • 解約の条件を、契約前に確認しておく

規模帯の確認がいちばん重要です。年商3億円の会社を100社見てきた事務所と、年商10億円の会社を10社見てきた事務所では、持っている引き出しが違います。

出典:税理士情報検索サイト(日本税理士会連合会)(登録番号・氏名から税理士登録の有無を確認できる)

当方の一次データ

顧問の見直しを相談されたとき、私がまず確認すること。

「今の税理士の何が不満か」ではなく、「3年後にこの会社が何をしようとしているか」から伺います。不満の正体は、たいてい相手の能力ではなく、会社側が求める機能が変わったことにあるためです。

年商3億円の頃に必要だったのは、正確な申告と、税負担を抑える工夫でした。その役割を十分に果たしてきた税理士が、年商10億円を目指す段階で急に力不足に見える。これは珍しいことではありません。求められる機能が、過去の確定から将来の設計へ移っているからです。

ただし、ここで正直に申し上げておきたいことがあります。税理士なら誰が担当しても同じ、とはなりません。理由は構造的なものです。令和3年経済センサス‐活動調査によれば、売上高1億円未満の企業が全体の79.7%を占めます。そうした規模ではビジネスモデルも比較的単純で、金額の大きい取引は限られ、数字が1%ずれても実務上の影響は限定的です。問題として表面化しにくい。結果として、規模の大きい会社で何が起き、どんな論点が生じ、何に注意して何をすべきかを、実務で十分に経験している事務所は、全体から見れば多数派ではありません。

これは誰かの怠慢ではなく、担当してきた会社の分布がそうなっている、というだけのことです。けれども、自社がその分布の外側に出ていくのであれば、相談する相手も合わせて選び直す必要があります。

不満の中身を切り分けずに顧問を替えると、同じことが数年後にまた起きます。替えた相手も、同じ規模帯しか見てこなかった専門家であれば、結果は変わらないためです。だから私は、不満の内容ではなく、これから何をしようとしているかから伺います。

実際にご相談を受けたなかでも、話を伺った結果「今の税理士はそのままで問題ありません」とお伝えした例は少なくありません。足りないのが財務の機能であれば、税務顧問を替える必要はなく、機能を足せば済みます。そのほうが会社の負担も小さい。

逆に、申告の品質そのものに不安がある場合や、自社の規模で当然に生じる論点が検討された形跡がない場合は、財務の機能を足しても解決しません。このときは率直に変更をお勧めします。判断の分かれ目は、ここだけです。

顧問の見直しに関するご相談を受けた際の、林 諒自身の実務上の考え方です。2026年10月時点の見解であり、個別の状況によって適切な判断は変わります。税務上の個別判断を示すものではありません。

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質問と回答

よくあるご質問


内容不明の残高が積み上がっています。顧問税理士の責任でしょうか。
多くの場合、原因は会計処理ではなく、その手前で情報が集まっていないことにあります。資料や経緯が現場に散らばったままでは、誰が処理しても内容は確定できません。まず情報が集まる経路を整えるほうが先で、顧問を替えるだけでは同じことが続きます。
放置すると、最終的にどんな損失になりますか。
表に出るのは、たいてい後になってからです。取扱いの誤りが後から判明して多額の追加納税が生じたり、M&Aで売却する際に買い手側の調査で指摘され、売却価額を押し下げる要因になった例を見てきました。いずれも原因は数年前からあったもので、その時点では誰も困っていませんでした。
今の税理士に不満を伝えたほうがよいですか。
改善の余地があるなら、一度伝える価値はあります。担当者レベルの問題であれば、担当の変更で解決することもあります。伝えても変わらなかったという事実があるほうが、変更の判断もしやすくなります。
顧問税理士を変えずに、財務だけ相談することはできますか。
できます。税務顧問はそのままに、財務の機能だけを別に確保する形です。林 諒のサービスにも、顧問税理士を変えずに財務顧問だけをお受けする形があります。今の税理士との関係を整理する必要はありません。
部門別会計は、年商いくらから必要ですか。
複数の拠点や事業を持った時点から検討が始まります。年商3億円を超えたあたりで必要性が見え始め、年商10億円では前提になることが多いと考えています。ただし金額より、社内に損益の異なる単位がいくつあるかのほうが判断基準として実質的です。
複数の税理士に同時に相談してもよいですか。
問題ありません。ただし自社の決算書や試算表を渡す前に、守秘義務の取り扱いを確認しておくことをお勧めします。税理士には法律上の守秘義務がありますが、契約前の段階では書面で確認しておくほうが確実です。
決算期の途中ですが、この段階で相談してもよいですか。
構いません。実際に動くのが決算後であっても、何を基準に選ぶかを先に整理しておくほうが、判断を急がずに済みます。相談の時点で変更を決めている必要はありません。

出典


本ガイドは、公開されている制度資料と実務経験にもとづく一般的な考え方を示すものです。個別の税務判断、および融資の可否・金額・条件については、会社ごとの状況および金融機関の判断によって異なります。制度は改正されることがあるため、実際のご判断にあたっては最新の情報をご確認のうえ、個別にご相談ください。

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